発熱などがあると「インフルエンザの検査をしてほしい」「新型コロナの検査をしてほしい」と受診されることがよくあるかと思います。
とりあえず検査してはっきりさせればいいのでは?と思われるかもしれませんが、感染症の診断はもう少し複雑です。
そこで、流行感染症(特にインフルエンザや新型コロナなど)と検査の関係と、当院での方針をまとめましたので、受診の際の参考にして下さい。
検査と診断の関係
「熱が出たから、すぐに検査をしてほしい」「検査をしないと、何の病気かわからないのでは?」…そんな不安を感じることもありますよね。
当院では、お子さまに「痛い思いをさせるだけの、不要な検査」を避けるとともに、適切なタイミングで正しい判断をするために、
以下のような考え方で診断を行っています。
検査よりも大切なこと(=検査前確率)
医師は問診や診察を行いながら、検査をする前の段階で「その病気である可能性(検査前確率)」を計算しています。
- まわりの流行は?(ご家族、学校、地域で流行っているか。特に濃厚接触者がいるか)
- お子さまの様子は?(熱の出かた、症状の経過、顔色やぐったり感など)
これらを総合して、検査前の可能性が「低い」「中くらい」「高い」の3つに分けてアプローチ(実際のアクション)を変えています。
確率によって変わる「実際のアクション」
1. 可能性が「低い」場合:検査は行わず、様子をみます
周りで流行っておらず、症状も典型的でない場合、検査を行っても「間違って陽性(偽陽性)」と出てしまうリスクが問題になります。
そのため、まずはむやみに検査をせず、症状に応じたお薬を処方して経過を観察します。
2. 可能性が「中くらい」の場合:タイミングを見極めて「検査」を行います
「流行しているけれど、症状がそこまで揃っていない」「熱が出始めたばかり」といった状況です。
この場合は検査が最も役立ちます。ただし、症状が出始めた直後はウイルス量が少なく正しく結果が出ない(偽陰性になる)ことがあるため、最も確実なタイミングを見極めて検査を行います。
3. 可能性が「高い」場合:検査なしで治療を始めることがあります(みなし診断)
「ご家族がインフルエンザで、お子さまも急に高熱が出た」「典型的な症状が出ている」というように、状況も症状もしっかりと揃っている場合です。
ここで万が一検査結果が「陰性」と出ても、それは「たまたま検出できなかっただけ(偽陰性)」の可能性が高いため、検査結果によって治療方針が変わりません。
この場合には、あえて検査をせず、診察に基づいた治療(みなし診断による治療)を開始します。
なぜ、あえて検査をしないことがあるのか?
- お子さまの負担を減らすため
鼻の奥をこする検査は、お子さまにとって大きなストレスや痛みとなります。
検査をしなくても確実な方針が決まるなら、負担を最小限に抑えたいと考えています。 - 「間違った結果」に惑わされないため(重要)
検査は100%完璧ではありません(専門的には「感度/特異度ともに100%の検査は存在しない」と言います)。むしろ正しく出ないことは常にあります。
陰性だからと安心していたら実は感染していた…という「間違い」を防ぐためにも、検査前確率とタイミングを大切にしています。
最後に
検査を「する・しない」に関わらず、保護者の方とお子さまのお話をしっかり伺い、その時のお子さまの状態にとって最も有益な判断を目指しています。
「今日はどうして検査をしないのかな?」など、疑問に思われたときは、いつでも気軽にお尋ねください。
