「急に目をパチパチ(まばたき)させるようになった」

「風邪でもないのに、咳払いや鼻をならす音が続く」

「さっき行ったばかりなのに、何度もトイレに行きたがる」

幼稚園や保育園のお子さんを持つ親御さんから、このようなご相談をよく受けます。

親御さんは「園で何か嫌なことでもあったのかな?」「いじめられているのでは……?」と心配されますが、実はお話を詳しく伺うと、「もうすぐ遠足がある」「運動会の練習が始まった」といった、喜ばしい出来事がきっかけになっていることが少なくありません。

今回は、子どもにとっての「ストレス」の正しい考え方と、ご家庭での見守り方についてお話しします。

「嬉しい・楽しい」も脳には大きな刺激です

一般的に「ストレス」というと悪い出来事を想像しがちですが、医学的には「ワクワクするような興奮」や「新しい環境への緊張」も、心身に影響を与える刺激(ストレス)に含まれます。

さきほどの「まばたき」や「頻尿」も次のように説明できます。

  • チック症状(まばたき・咳払いなど)

    自分の意志とは関係なく、素早い体の動きや音が繰り返される状態です。子どもの4人に1人は経験すると言われるほど一般的なもので、実は誕生日、祝日、旅行などの「興奮する出来事」が引き金になることもよく知られています。

  • 心因性の頻尿(何度もトイレに行きたがる)

    膀胱のコントロールを司る自律神経が、心の動きに敏感に反応している状態です。楽しい行事への期待感で「気持ちが張り詰める」と、それが尿意として現れることがあります。

なぜ「楽しいこと」で症状が出るの?

成長期のお子さんは、感情や動きを制御する神経系がまだ発達の途中にあります。

そのため、大きなイベントを前にして心が大きく動くと、脳の神経系がいわば「オーバーフロー(過剰な刺激)」の状態になりやすく、それが体のサインとして現れてしまうのです。

「楽しんでいるはずなのに、なぜ?」と不思議に思うかもしれませんが、それはお子さんがその行事に全力で、一生懸命に向き合っている証拠でもあります。

親御さんにお願いしたい「3つの安心ケア」

お子さんの神経系が「ちょっとお疲れ気味だよ」とサインを出しているときは、ご家庭で以下の対応を心がけてみてください。

  1. 「指摘せず、さらっと流す」

    チックも頻尿も、本人がわざとやっているわけではありません。本人に「やめなさい」と注意したり、回数を数えたりすると、緊張がさらに高まって症状を長引かせてしまいます。「今は一生懸命がんばっているんだな」と、気にせず見守ってあげることが一番の近道です。

  2. 「静かに過ごす時間を意識的に作る」

    ワクワクや興奮が続いているときは、意識的に絵本を読んであげたり、ゆったりとスキンシップをとる時間を増やしたりして、心と体を落ち着かせてあげましょう。

  3. 「生活リズムと休息を最優先に」

    十分な睡眠は、興奮した神経を鎮める最高の薬です。行事の前だからこそ、いつもより早めの就寝など、ご家庭でのいつものルーチン(決まった生活の流れ)を大切にしてください。

クリニックを受診する目安

これらの症状は、基本的には成長とともに自然と落ち着いていくものです。

ただ、以下のような様子が見られる場合は、別の原因(膀胱炎や肺炎など)がないか確認する必要があります。

  • 「おしっこをするときに痛がる」

  • 「喉に何かが詰まっているような、苦しそうな様子がある」

  • 「症状のせいで眠れない、日常生活に支障が出ている」

上記に当てはまらなくても、「うちの子、本当に大丈夫かな?」と少しでも不安を感じたら、いつでもお気軽に当院へご相談ください。

診察をして「身体的な異常がない」と確認できるだけでも、親御さんも、もしかしたらご本人もホッと安心できるはずです。

親御さんの心のゆとりは、そのままお子さんの心の安定へと繋がります。

大切なお子さんの成長のステップを、一緒にゆったりとした気持ちで見守っていきましょう。