おたふく風邪(ムンプス)は日本ではありふれた病気と言われています。

幼稚園や保育園でもしばしば流行するため、軽い病気のように思われがちなところがあります。

外来でもよく遭遇するのですが、説明の際に「自然に治る病気ですが、10%に髄膜炎が起こります。そのほかにも精巣炎、卵巣炎、膵炎などが起こることがあり、1000人に1人は難聴になります。」というと大変驚かれます。

ワクチンを打つより「自然に感染した方がよい」という意見の方が時々おられるようですが、ワクチンでは髄膜炎は0.01-0.1%に起こることがあるものの精巣炎・卵巣炎・膵炎はほとんど起こらない、ということを説明すると考えを改めてもらえることが多いです。

昨年日本耳鼻咽喉科学会がおたふく風邪によっておこる難聴(ムンプス難聴)の調査を行いました。(http://www.jibika.or.jp/members/jynews/info_mumps.pdf

それによると少なくとも年間350人程度がムンプス難聴になり、うち80%は高度以上の難聴であり、最終的には5%が両側難聴になりました。ムンプス難聴は治療法がなく、一度発症すると完全に回復することはありません。

注意すべきはこのデータはあくまで耳鼻科がまとめたものであり、小児科のみにかかっている症例は含まれないという点です。実際にはもっと多くの難聴例があることが予想されます。

また、ムンプス難聴の症例は15歳以下に多いですが30-40歳の子育て世代にも多いというのが特徴です。

日本ではおたふく風邪のワクチンはまだ任意接種となっています。接種率が30-40%程度のため集団での抗体保有率が70%程度に止まり小流行が頻発します。

しかし、効果と不利益のバランスを考慮してもワクチンを接種するほうが有益であることは明白のように思うのですが、どうでしょう?